世の中には怪しげなものがたくさんあります。占いの世界にも多くあります。
ここでは、四柱推命の本筋から逸脱し、怪しい世界に入り込んでしまっているエセ四柱推命を見抜く目を養っていただくコーナーです。
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視点21 調候という概念の正しさは揺るぎない???
四柱推命には、調候という考え方が言い伝えられています。
予備知識のない方には、理解しづらい面もありますが、直感的に理解できる部分もあると思いますので、あえてここで取り上げることにしました。
調候とは、一言でいうなら、「気候との調和」ということです。その要素は、「寒暖」と「燥湿」です。四柱推命の重要な要素である十干(jyukkan)においても、季節折々の気候条件との調和が必要であるという思想です。
ちょっと、はしょった言い方をすれば、夏は暑いため乾燥するから、涼しくし、湿り気を与える作用があると思われる干(kan)が必要である、といった考え方です。
この考え方を、今日本の四柱推命の専門家と自称する人々が採用するのは、辛亥革命(1911)前後に大変活躍した、徐樂吾(Jyo Rakugo)という四柱推命の研究者が、『造化元鑰(Zoukagennyaku)』『窮通寳鑑(Kyutuhoukan)』という本の註釈本を出したからと断言できます。
これらの2書は、多少の異同はありますが、内容はほぼ同じです。原本は皇帝直属の天官によって著わされたとのことですが、著者名は不明です。天官とは、暦を作成する専門家で、今で言うなら天文学者と言うところでしょうか。
それよりさかのぼること約300年前に著わされた『滴天髓(Tekitenzui)』に、「寒暖燥湿」という視点から、すでに調候に類似した概念を見ることができます。しかし、徐樂吾氏が展開した調候の考え方は、『滴天髓』に言われているものとは若干異質なところがあるので、区別して考える必要があります。
日本では、徐樂吾の註釈本を元に、「調候用神」といった用語を使う専門家が多くいます。『窮通寳鑑』に掲載されている徐樂吾氏が作った「調候用神表」を、出典を明らかにすることなく、そっくりそのまま拝借して公表している書も見かけます。
この調候という点にまで触れているということは、中国の原書にも目を通し、四柱推命を研究しているということの証明にはなるでしょう。しかし、私は、そのすべて、全面的に正しいとして取り入れることに疑問を持っています。
一番の問題点は、四柱推命は日干(nikkan)の強弱を調和するということを、まず最も重要な視点としているのですが、調候について言われていることを全面的に正しいとして取り入れると、この最も優先すべき視点と、「気候との調和」の視点が矛盾するのです。
例えば、夏に生まれ、調候の視点からして「水」の作用があるのが望ましいとしても、日干の強弱の視点から見ると、水の作用は不良であると判断せざるを得ないことが間々あり、この問題を論理的に解決することができない状態に陥るのです。
また、季節によって、庚金を丁火で鍛える(剋する)必要があるとしているのですが、その根拠が、刃物を炉火で鍛えるのと同じ関係であるとしているのです。これを「丁火鍛金(TeikaTankin)」などといい、望ましい干と干の関係であるとしているのですが、あまりにも即物的で、五行十干の本質から逸脱したことと断言できます。そもそも既述のように、日干を無視して良し悪しを論じることはできないのです。
方便として庚金を刃物にたとえることはありますが、たとえであることを忘れて、いつの間にか庚金イコール刃物にしてしまっているのが問題なのです。
ただし、「燥湿」の視点は有効であると思っています。それは土との関連で、乾性の皮膚病、湿性の皮膚病に実証的に関連を見ることができるからです。
ですから、現時点における私の考えは、「燥湿」については受け入れ、「寒暖」については保留という立場なのです。
いずれにしても、中国の原書に言われていることが何もかも正しいということはあり得ないことですし、徐樂吾氏は近代もっとも著作が多い研究者ですが、その議論には多くの問題をはらんでいます。
しかし、「著作が多いこと」イコール「優れている」と勘違いしている日本の専門家が後を絶ちません。氏の業績の功罪を論じるなら、罪のほうが勝っているのではないかと考えています。ですから、徐樂吾氏の既述の著作や評註は、注意深く読み解く必要があるのです。
四柱推命の書は宗教の教典ではないのですから、絶対的なものとして関わるのではなく、ちょっとは疑ってかかることも必要ではないかと思うのです。 |
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